2013年4月8日月曜日

25.マシュー以前―妖怪めぐり(2)

座敷童がいるという有名な旅館へ電話をしてみると、
「いつでも空いてますよー」とのこと。
おかしい、噂では3年は予約でいっぱいという旅館だ。
「え、空いてるの?」
「いつ来ても大丈夫だよー」

というわけで行ってきた、金田一温泉郷。


部屋に入ると、隣の部屋から小さい子供たちの遊ぶ声。
しまったな、隣は家族連れか、と思いながら
夕食のため宴会場へ向かった。

増改築を繰り返したような長く伸びた古い木造の建物で、
想像以上に部屋数が多い。
廊下に洗面の水道蛇口が並んでおり、突き当りに集合トイレがある。
大学のサークルとかが、きっとこういうところで合宿をするのだろう、
といった風情だった。
そして、階段や長く続く廊下、部屋、いたるところに
宿泊客が座敷童へ土産として置いて行ったのだろう、
人形やらおもちゃがたくさん飾られていた。

広い宴会場へ入ると、宿泊客は一角にポツン。
どうやら宿泊は4組しかいないらしい。
我々の部屋は、2階の廊下の突き当り。
階段を上ってからの長い廊下沿いに、我々以外に宿泊客はいなかった。

さっきの子供の遊び声は気のせいだったのかしら、
と思っていたところ、
トレイのため席を立っていたヨシオがウキウキ帰ってきた。


食事も終わり、しかしまだ19時前。
他にやることもなく、我々は宿の向かいにあった、
スナック北国へ。
旅の締めくくりは、青森は下北半島、
黄泉の国への入り口“恐山”だ、と話をしていたら、
ちょっと年配のホステスさんに
「あんた、あそこはふざけ半分で行っちゃダメよ」と叱られ、
私のどこかふざけてんだ(怒)とプンスカ怒って宿に戻るのだった。


部屋に戻って飲み直していると、
部屋の戸をパタパタと叩く音。
と同時に鳥肌が走った。
私とヨシオは目を合わせ、即座に覚悟した。
来たのだ、座敷童が。
この宿の座敷童は通称“亀麿(かめまろ)”というらしい。
私はヨシオに「いいよ、亀麿、開けてあげて」と伝えた。


ビビった。
姿こそ見えないが、
間違いなく、亀麿とコミュニケートしていた。

不思議な現象は断続的に続き、
最後は私が眠くなってお開きになった。
酔っぱらったヨシオはご機嫌に半分眠ったままポニョを歌い続けていた。

「亀麿!いいかげんにして!
 もう寝るんだから!
 明日朝7時に起こしてね。
 おまえももう寝ろ!
 ぐないー」

翌朝、部屋に飾ってある鳥のおもちゃが一斉に鳴き出した。
約束の7時だった。


私は妖怪話が大好きだが、実際に存在するものだとはあまり思っていない。
人間が創りあげた存在が、とてもおもしろくて興味があるのだ。
でも、姿は見えなかったけど、座敷童は確かにいた。
世の中、不思議なことはあるもんなんだな。


残念ながら2009年10月、その旅館は火事で全焼した。
現在も休業中のようだ。



2 件のコメント:

  1. こんばんは~
    今日も笑わせてもらいました!

    しかし、すごいですねぇ~マルモさん。
    私もそういう不思議なことってあるって思いますが、
    残念ながら(?)、そういうシックスセンスは備わっ
    ておりません。。。

    返信削除
  2. ☆アンジュさん☆
    いつもありがとうございます♪
    座敷童は、これっぽちも期待せずに行ったので、
    本当に驚きました。
    座敷童伝説の残る土地の空気を感じに行こう、くらいのノリだったのです。
    あの、こんな話をしていますが、
    決して私は怪しい人物ではありませんので…(汗)。
    引き続きよろしくお願いいたします!

    返信削除