2013年3月28日木曜日

14.まちがったトレーニング(3)

マシューが我が家に来てから、
“犬”、“ドッグ”のキーワードで録画予約を設定し、
かたっぱしから犬に関する番組を鑑賞することがヨシオの日課になっていた。

愛犬家の皆様はご存知であろう、
アメリカのカリスマドッグトレーナー、シーザー・ミラン氏。




そして、シーザーに感化された男が我が家に一人。
もちろん、ヨシオである。



シーザー氏の華麗なテクニックを目の当たりにした後のヨシオは、
マシューに英語で語りかけるようになっていた。
カタコトの、変テコな英語で。



そして、シーザーの真似事が影響してかはわからないが、
ヨシオはこの後、ちょっとした人生勉強をするのである。

とある日、夕飯の準備に勤しむ私に、
ヨシオは帰宅するなり、ウキウキと、ある報告をしてくれた。



「じつは今日ね、上野を歩いていたら、
困っている外国人に相談されちゃってさ。
イギリス人の技術者が、
航空会社のミスでスーツケースが降りてこなくて、困ってたんだよー」

「でね、今夜泊まるお金もないっていうから、貸してあげたの。
ほら、オレもバックパッカーだったからさ、
いろんな国で親切にしてもらったし、
こういうのって持ちつ持たれつだよねー」

とても得意気である。

「・・・・・で、いくら渡したの?」

「一万円♪
 すぐに返してくれるっていうから、名刺も渡しておいたー♪」


ってか、それ、だまされたんだよ・・・
と言う気もなくなるほど、
あいつはホクホクと満足顔であった。



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