2013年3月22日金曜日

08.まちがったトレーニング(1)


マシューの月齢が4ケ月半の頃、
めでたくペット飼育可の部屋に引っ越しを完了し、
マシューにはケージを大好きになろうキャンペーンをしいていた。

ケージに入ると、おいしいおやつがいっぱいあるよ、
みたいなことをやっていたのだが、
残念ながらマシューは食べることに興味がなかった。
ゴハンやおやつがごほうびとして使えないのはとても痛い。

だからなのかわからないが、
ヨシオは”しつけ”と称して、
毎晩わけのわからない創作劇を繰り広げていた。

しばらくの間、彼の中で流行していたキャンペーン法を紹介しよう。
身長180cm、メタボ90kg近くの大男であるが、
その巨体を、小型犬用のケージにぐいぐいねじ込んでいく。
時にはビール片手にケージの中に詰まっていた。


どれくらいそれをやっていたのかは定かではないが、
私がそれを見つけたとき、
決して羨ましそうではない表情のマシューがそこにはいた。

ヨシオにとってマシューとのふれ合いこそが唯一の生活の潤い。
深夜の帰宅であろうとも、毎晩全力で向かい合っていた。




2013年3月21日木曜日

07.カキさんの夢



私は運動が大嫌いなため、
体力旺盛なマシューの散歩につきあい切れないときがあったり、
そもそも、散歩自体サボってしまえと、
チラと脳裏をかすめることも多くあるわけだが、
マシューはアスリート並にスーパー体力の持ち主。
希望を聞いたら、「ドッグランで2時間は走らせろ」というに違いない。

毎日2時間走らせるわけにはいかないので、
これまでは、朝の散歩はヨシオ、夜の散歩が私、という役割分担で、
1日の屋外での運動時間を2時間目標としてあった。
しかし3月よりヨシオがあんかけスパゲティの街へ赴任となったため、
朝の散歩ももちろん、動くのが大嫌いな私が行う羽目となった。

(小さい声で)めんどくせ・・、と言ったか言わなかったかわからないが、
ヒサンからこんな提案があった。

「マルモっさんは、朝、カキさんちまでマシューを連れてきて、
カキさんの淹れたコーヒーでも飲んでればいいよ。
お散歩はヒサンにまかせて♪」

カキさんちまで徒歩3分。それはなんて素晴らしい提案!
とつい乗ってしまいそうではあったが、
親しき仲にも礼儀あり、私はとても常識的な人間だ。
ひとまず笑って流した。

にしても恐るべしヒサン、マシューの溺愛っぷりがハンパない。


そんなヒサンの彼氏さんがカキさんである。
カキさんと私は暗い学生時代をともに過ごしたような、
そうでもないような、つきあいは意外と長い。

ヒサンは絵描きさんだが、
絵を描く以外のことがあまりできない。
炊事洗濯掃除といった、家事に関することは全般的に能力がない。

ヒサンはカキさんにおいしいエサ、いやゴハンを与えられ、
カキさんのお掃除したきれいな住まいに居候を決め込んで、
ぬくぬくぬくぬくしている。

カキさんはとても穏やかな人で、
陸ガメ3匹、なんとかガエル2匹とメダカを飼育し、
心が乱れたら庭の手入れをし、
こうるさい騒音(ヒサン)をシャットアウトする術も身に着けつつある。(上級者!)

マシューを孫のようだと目を細めるカキさん。
ヒサンだけでなく、マシューまでをも虜にする。
面倒な輩にモテモテの牧歌的な男である。

そんなカキさんの将来の夢をつい最近知ってしまった。
柴犬と2人、縁側とお庭のある小さなお家で、穏やかな日々を過ごすことだそう。

ちょっと胸が痛くなった…。
ガンバレカキサン。


ヒサンとカキさんは、
マシューのゴッドペアレントのような存在。


私はそんな2人に支えられながら、
東京の鮫が泳ぐ街でマシューを育てている。

マシューは2人が大好き。

2013年3月20日水曜日

06.こじらせていますか

マシューに翻弄される毎日、
話題はどうしても彼の話が多くなる。

仕事に出たとある日。
打ち合わせが長引く中、先輩が
「マシューくん、お迎えの時間大丈夫?」
と気遣ってくれた。
そしてマシューが最近ごはんを食べるようになったことや、
昼寝をするようになったことなんぞをチラリとはなしていた。

同席していた若者に、

「マルモさんママさんだったんですねー」
などと言われたので、
「いや、産んだ覚えはない」

「え、マシューくんって・・」
「犬だよ、犬」

妙齢のマルモは、外国人の旦那がいて、
外国名の赤ん坊がいると思われていた。

犬をいちいちお預けだなんて過保護だろー、
甘やかし過ぎだろー、だなんて・・・
マシューのスゴさ(ちょっと違うか)を
皆の衆、よう知らんだろ。

完全に独身をこじらせていますね、
といった空気に包まれながら、
その場を後にした。

仕方ないよね、
あいつ、留守番させたらマンション追い出されちゃうもんね・・。
っっーつーか!過保護のなにが悪い!
保護のし過ぎに問題ないだろ!
責任はおれにあるんだよ!
と逆切れブツブツ言いながら家路についたのだった。




2013年3月19日火曜日

05.マシューのファミリー


マシューが我が家に来た頃、
住まいはペット飼育不可、
そして私は珍しくスケジュールを詰め込み、
早朝から深夜まで仕事があった。

そのため仕事が落ち着き、ペット飼育のできる住まいに引っ越すまでの1か月間、
周囲を巻き込んでのマシュー育児であった。

ゴットペアレントのヒサンとカキさん、
近所にいた弟くん、そして実家のパパママ、しつけ教室。

人見知りしないマシューはむしろ大喜びだったわけだが、
ハイパー暴れ犬マシューに、見事に皆疲弊していった。

この頃のマシューには多動症の疑いがあった。
一時も休まず一心不乱に走り回り、寝ない、食べないマシューに、
今後やっていけるのか不安で仕方なかった。






2013年3月18日月曜日

04.マシューは突然やってきた(2)


・・・・・
ちがう。ちがう。
私が夜な夜な調べていたビションとちがう・・・

腹をくくった。いや、くくろうと思った。
うちに来てしまったんだから仕方あるまい。
夢見たビションとだいぶ違うけど、
来てしまったんだから、
仕方あるまい。

しかし私は週明けから1か月間、怒涛のスケジュールを組んでいた。
なぜ今買ってきたんだ!
(どうしてキラキラな子じゃないんだ・・、
 ちがう、小犬のお世話、できないよ!)

加えて我が家は賃貸、ペット飼育は認められていなかった。
イカッた! 烈火のごとくイカッた。




なぜなら、ヨシオは突然、
なんの相談もなくマシューを連れて帰ってきたのだ。



この頃のヨシオは仕事がスーパー忙しく、
体も心も既に臨界点に達していた。
ゴミ出しで階段を踏み外して重度の捻挫をし、
財布を落とし、
その翌日に、お金の入った封筒を同日に2回も落としたり、
まぁとにかくふわふわしていた。
躁状態だ。
そして、泊まり勤務明けで疲労困憊、
残暑厳しい9月1日に、マシューを連れて帰ってきたのだった。



2013年3月17日日曜日

03.マシューは突然やってきた(1)


私はお気に入りの喫茶店で仕事らしいことをしていた。
ら、ヨシオから電話が。
「マルモっさん!どこいるのよ!
 はやく帰ってきてよ!」

はやく帰ってきてよ、なんて初めて言われた私は、にわかに嫌な予感がして、
のんびりスパゲッティを片付けながら、
ゆうゆう帰宅したのであった。

リビングに入るドア、ガラス越しに白いのがヒョコヒョコしているのが見えた。

かつて私の実家には2匹のヨークシャーテリアがいた。
それはもう美しくて、かわいい女の子だった。
15歳、16歳で亡くなってから、ずっと犬が恋しかった。
体の小さな2匹は、老犬になって、
小さな体に注射やら点滴やらでかわいそうだったので、
今度飼うならもう一回り大きい犬がいいな、と思っていた。
白くてふわふわ、まんまるな目と鼻と顔のビションフリーゼは憧れだった。

私はヨシオに聞いた。
「この子、何?」

もしやと思ったけど、
ビションフリーゼだとヨシオはいった。



2013年3月16日土曜日

02.留守番とかしねーし


我が家の最重要課題はマシューの留守番。
マシューが我が家にやってきて約半年、
マルモは在宅の仕事と、たまのお出かけ仕事しかできません。
なぜなら、マシューは留守番ができないからダ!

数々の留守番トレーニングに疲れ果てたマルモとヨシオは、
じつは最近、ちょっとあきらめはじめている・・・。

1か月しつけ教室にも行って、
トレーナーさんから勉強したトレーニングも頑張ったんだけど、、、
賃貸で狭小な東京の住宅事情(吠え続けられると無理)と、
追いかけてくる仕事の〆切に、いつの日か心が折れてしまったのである。

良くない。わかっている。
わかっているのですよ。

とはいっても、マルモも仕事に出ないといけない時もあります。
そんなときは、ご近所に見つけたドッグカフェにお預けベイベー。

お店のかわいいお姉ちゃんたちが、 これでもかってほど遊んでくれて、
さらにマシューの一番大好物のワンコがたくさん。
そう、マシューは人間よりもワンが好き。

仕事が立て込むと、このカフェに連日お世話になってしまう。
マシューにとってはパラダイス☆
しかも近所、道は2回目で覚えた!
お預け大好き犬になってしまった。
家にマルモがいたって、マシューはカフェに行きたがる始末。
もれなく留守番のハードルをさらに上げてしまったのだった・・・

時間が出来たらやろう、
週末やろう、この案件が片付いたら・・・
なんて悠長なこといってられなかったんだ!